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二人の靴のセールスマンがある島にやって来た。見ると、島の人々は全員裸足で、誰一人として履物を履いていなかった。二人のセールスマンは会社に帰って報告した。一人は「あの島では靴は売れません。誰一人として靴を履いていないのです」と報告した。もう一人は「あの島は有望な市場です。誰も靴を履いていないから、全員に売ることができます」と。さて、どちらのセールスマンが正しいのだろう。

この話は、35年くらい前にあるセミナーで聞いたものである。この話の島のイメージは所謂「未開の地」であった。だから、どちらのセールスマンの見方も正しいが、物事を積極的に捉えるか、消極的に捉えるかの例であったと記憶する。だが、今この話を聞くと、島のイメージをどう捉えるかで報告は変わる。今まで、靴を履いていたのだが、靴を買う金もない島人なら、「靴は売れない」の報告になる。

この話を聞いた1980年代、日本経済は依然として高い水準の経済成長率を示していた。誰もが靴を買う、それも新しくて、よい靴を好んで買った。だが、今の日本、靴を買うお金がない人が増え、さらには裸足で生活する人が浸みだしてきた。誰も好んで裸足になっている訳ではない。収入が減り、米やパンが値上がりして、靴を買う金がなくなってきたので、致し方なく靴を買うのを止めたのである。

このセミナーで「外的要因」と「内的要因」という話があった。「外的要因」には経営者が、「内的要因」には管理者が対応すべきという話であった。「靴が売れない」のが市場の変化、即ち「外的要因」なら、その対応策は経営者が立てるべきである。「靴が売れない」理由が価格や品質にあるなら、それは企業の「内的要因」であるから、営業部長や製造部長が対策を考えるべきだ、という話であった。

今の日本、「靴が売れない」のは内的要因なのか、それとも外的要因なのだろうか。安倍晋三首相は「リーマン・ショック並みか、東日本大震災並みの危機でない限り、17年4月の消費増税は実行すると」と言っていた。民進党の増税時期延期の提案に対しても、しどろもどろながら「日本経済は順調」と言い続けた。内心は民進党に先手を打たれ、「しまった」の思いであったのだろうが・・・。

処が、伊勢志摩サミットで安倍首相は突然、「世界経済にはリーマン・ショック並みの危機がある」と言い出した。この時、世界の首脳の誰一人として安倍に同意しなかった。今では、誰もが理解していることだが、首相は「消費増税延期」を、世界経済が危機的状況寸前という「外的要因」を理由にして、正当化しようとしたのである。従って、「増税延期」の理由は「内的要因」に拠らざるを得ないのである。

処が、首相は「アベノミクス」は順調だが、新興国の経済が悪いから「増税延期」をしなければなくなったとあくまでも「外的要因」を理由にしている。企業経営なら、外的要因が悪いならその対応策は、経営者の責任。新興国の経済が悪いなら、その新興国の経済支援策を論じるのがトップの責務。つまりサミットで世界の首脳はそれを論じなければならなかったが、それをしなかった。

安倍首相の認識と世界の首脳の認識は違っていた。世界の首脳は「アベノミクス」は失敗だと認識しているが、首相はそれを認めると政治責任を取らなければならない。だから「アベノミクス」は順調だと言う。黒田日銀総裁は「異次元緩和は所期の効果を果たしている」という。だが、3月に政府に招かれてきたクルーグマン教授は「金融政策(異次元緩和)には限界があった」指摘していたのであった。

そもそも「アベノミクス」が目指した2年で2%の経済成長=物価上昇。この経済成長率至上主義が本当に正しいのかである。日本は少子高齢化社会に入り、人口が減少傾向にある。必然、日本の企業経営者は日本経済の成長率を低く見る。だから金利が低くても設備投資をしない。「もう靴は売れない」と考えている。「アベノミクス」は「もう靴ではない」時代に「靴を作れ」と言っているのではないだろうか。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、労働者の賃金は次のようになっている。       

実質賃金    名目賃金

2010年=100     100
12年  99.2    98.9
13年  98.3    98.5
14年  95.5    98.9  (4月増税後の数値)
15年  94.6    99.0

名目賃金はほぼ横ばいであるが、実質賃金は年を追うごとに低下している。
この3年、「アベノミクス」を賃金で見て評価する限り、実質賃金は5%近くダウンしているので、完全に失敗である。

経済が良くなると言うことは、国民の大多数を占める勤労者の生活が良くなると言うことである。この3年で、勤労者の実質賃金が5%も下がっていて「アベノミクス」は順調だとか成功だとか言えないだろう。この「アベノミクス」の失敗を示す統計が公開されているにも拘わらず、日本のマスコミは報道しない。報道するのは有効求人倍率が1.3という首相に都合のいい数字だけである。

実質賃金が下がっているのに、有効求人倍率が高いということは、何を意味するか。正規社員の数が減って非正規社員の数が増えている、ということである。「アベノミクス」の所為ではないが、2000年の実質賃金は107.2であった。つまり、この15年間で実質賃金は107.2から94.6まで、12.6%も下がっている。これでは、国民の消費が落ち込むのは当然である。

実質賃金がダウンしている上に消費増税。消費税率がアップした2014年4月以降の実質消費支出はマイナス2.9%、さらに15年はマイナス2.3%と合計マイナス5.2%である。実質賃金が5%下がっているのだから、実質消費が5.2%下がるのは当然である。完全な「消費不況」が今の日本の姿である。だが、日本のマスコミはこの事実を「アベノミクス」の失敗だとは、決して報道しないのである。

日本経済が消費不況に陥っているのは、数字で示されている。だが、日本のマスコミがそれを正しく報道しないで、首相にとって都合のいい数字、特に有効求人倍数だけを殊更に報道する。失業者がいないから、景気は悪くない、という印象操作である。日本経済は「靴を買えない」人が増えている。それを「外的要因」だと言うのなら、首相は率先して、新興国経済、なかんずく中国経済にその打開を求めるべきだろう。

中国経済は、広大な土地と14億の民を持つ。「爆買い」などで日本を訪れる中国人は、「靴を履く」ようになった人たちである。だが、中国には一度も靴を履いたことのない人たちが何億といる。ここが日本とは違うのである。「あの島は有望な市場。誰も靴を履いていないから売れる」。そういう国なのである。一度履いた靴を履くことが出来なくなった日本とは、そこが違うのだ。

消費税の「増税延期」はクルーグマン教授の勧告に従ったのは公然の秘密。その時、教授は「金融政策(異次元緩和)には限界があった」と指摘した。それは「アベノミクス」の失敗を示唆したのと同じである。だが、憲法改正に執念を燃やす安倍首相は経済政策の失敗で責任を取ろうとはしない。それでいて、「経済政策」を掲げて参院選に臨もうとしている。この矛盾にどれだけの国民が気づいているのだろう。

政治とは「経世済民」、即ち、経済である。経済ジャーナリストや経済評論家は「政局」を論じることはないが、経済に関連する「政治」については、積極的に述べる時期に来ている。安倍自民党が、いくら参院選で「経済政策」を掲げても、14年12月の総選挙後の安倍政治を見たら分かるように、それは国民を誑かす隠れ蓑であることを、経済ジャーナリストは指摘すべきだと考える。

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